場面4「やったことを、残して引き継ぐとき」 9/27本目
AIには時間の感覚がない。日をまたぐ仕事は、日付と経緯を渡して続けさせる
教科書でいうと → 第7章「会社の第2の脳」(解説動画つき)
昨日AIと進めた仕事の続きを、今日お願いした。すると、昨日の話がなかったかのように、最初から説明が始まる。あるいは、もう終わった仕事について「明日までに仕上げます」と言われる。この記事では、僕が2026年の5月から6月にかけて苦しんだ「AIには時間の感覚がない」という問題と、社長の側で補うやり方を書きます。
終わった仕事に、3日続けて「明日までに」
2026年の5月、ある案件で、おかしなことが続きました。もう終わった案件について、AIが3日続けて「明日までに」と言ってきたのです。同じころ、関係のない話にまで、僕の名字を主語に付けてくることもありました。誰がやったのかを、勝手に作ってしまうのです。英語は主語を省かない言葉なので、日本語の文に主語がないと、AIが主語を作ってしまう。そして、AIは「今」しか生きておらず、昨日と今日の区別がない。僕は「AIには時間の流れがないんだ」と気づきました。
日をまたぐ仕事が、続きから進まない
6月になっても、この問題は形を変えて続きました。人が間に入る仕事や、数日かかる仕事を、AIが翌日に続きから進められないのです。ルールに書く、手順書にする、案件の管理表を使う、顧客管理の道具の進み具合の欄を使う。いろいろ試しましたが、頭がこんがらがるような状態になりました。「AIの弱点は時間の概念がないんですよね」。そのころの僕の言葉です。非常につらい時期でしたが、少しずつ形になっていきました。
分かったのは、時間は社長の側から渡すということ
この経験で分かったのは、AIに時間の感覚を期待するのではなく、こちらから時間を渡すということです。
- 今日の日付を、毎回の頼み事の頭に書く
- これまでの経緯を、短くまとめて渡す
- 何が終わっていて、何が残っているかを、こちらから示す
AIは、渡された文の中では賢く動きます。渡されていない昨日のことは、知らないものとして扱う。そう考えると、付き合い方が見えてきます。
今日から真似できる手順
1. 頼み事の最初に、今日の日付を書く
まず、AIに頼む時は、最初の行に今日の日付を書きます。「今日は10月4日です」の一行があるだけで、「明日」「来週」といった言葉のずれが減ります。
2. 経緯は、3行のメモにして渡す
続きの仕事を頼む時は、これまでの経緯を3行にまとめて渡します。「何のための仕事か」「どこまで終わったか」「今日やってほしいことは何か」。この3行です。長い説明より、短いメモの方がAIは迷いません。
3. 終わった仕事には、終わったと書く
終わった案件は、メモの中で「完了」とはっきり書きます。書いていないと、AIはまだ続いている仕事だと思って、予定を立て直そうとします。終わった物を消すのではなく、終わったと書いて残すのがコツです。
4. 主語は、こちらで書く
誰がやるのか、誰がやったのかは、こちらで書きます。「私が先方に電話した」「あなたは下書きを作る」。主語を省かないだけで、AIが主語を作り話で埋めることがなくなります。
1日の終わりに、引き継ぎのメモを作らせる
おすすめは、1日の終わりに、AI自身に引き継ぎのメモを作らせることです。「今日やったこと、残っていること、明日最初にやることを3行で書いて」と頼みます。次の日は、そのメモを最初に渡してから話を始めます。人の職場で、日報や申し送りを書くのと同じです。AIも、申し送りがあれば続きから始められます。
数日かかる仕事は、区切りごとに分ける
数日かかる仕事を、1つの頼み事にしないことも大事です。「今日は下書きまで」「明日は確かめと直し」のように、1日で終わる区切りに分けます。区切りごとに終わったかどうかが分かるので、AIも人も、どこまで進んだかで迷いません。
3行のメモの例
たとえば、次のような形です。「今日は6月の第2週の月曜日です。この仕事は、取引先向けの案内文を作るためのものです。先週の金曜日に下書きまで終わり、相手の確認待ちでしたが、今朝返事が来ました。今日は、返事にあった2か所を直してください」。長く見えますが、書いていることは日付、目的、終わったこと、今日やることの4つだけです。これを毎回書くのが面倒なら、前の日の引き継ぎメモを貼るだけでも同じ効き目があります。大事なのは、AIに「いつの、どの仕事の、どこからか」を伝えることです。
気をつけること
日付や経緯を渡しても、AIが古い話を持ち出すことはあります。おかしいと思ったら、その場で「それは終わっています」と伝えて直させてください。期限の管理を、AIの記憶だけに任せないでください。大事な期限は、カレンダーや管理表など、人が見られる場所に置いておきます。また、引き継ぎのメモに、お客様の個人の情報を書きすぎないように気をつけてください。
今から始める社長へ
AIは、時間を知らない優秀な助手です。今日の日付と、ここまでの経緯を渡すだけで、仕事の続きがぐっと楽になります。まずは次の頼み事の頭に、今日の日付を1行書いてみてください。