場面6「AIに任せる範囲を、決めていくとき」 17/36本目
守りの仕組みが仕事を止めている時は、効いていないものから外す
教科書でいうと → 第14章「AIと働く約束ごと」(解説動画つき)
AIに任せる仕組みを作ると、安全のための仕組みが、どんどん増えていきます。それが、仕事を守っているのか、止めているのか。見分けるのは、意外と難しいものです。僕は、2026年の8月の末に、これで困りました。この記事では、守りの仕組みを外して仕事を取り戻した経緯と、社長が真似できる手順を書きます。
疑わしきは、仕事をしない
2026年の8月の末、僕は、AIが置いた過剰な装置が、作業の生産性を下げていると診断しました。作業が二重になるのを恐れて、AIが仕事をしなくなっていたのです。「疑わしきは仕事をしない」という状態でした。AIの安全装置は、放っておくと、過剰になりがちです。そこで、障害を起こしている装置から順に外しました。僕はこれを「装置ダイエット」と呼びました。その結果、管理の手間は下がりました。
署名の確認で、15本が止まった
同じ8月の末、暗号の署名を確認する仕組みも、やめました。署名のない作業が15本あり、そのすべてが弾かれて、仕事が止まったからです。調べると、その仕組みが防いだ実害は0件で、止めた仕事は多数でした。僕は、「前から、署名のせいで仕事ができない、何回合った?」と思っていました。そこで、署名の確認を外して、中身の検査だけを残しました。
数えると、見えてくる
ここで分かったのは、仕組みが守った回数と、止めた回数を、数えてみる価値です。守った実績がなく、止めた実績が多い仕組みは、外す候補です。
今日から真似できる手順
特定の道具に頼らず、考え方を書きます。
1. 守りの仕組みを、一覧にする
AIに頼んで、「確認、制限、許可の仕組みを、すべて挙げて」と聞きます。それぞれ、何を防ぐために置いたのかも、一緒に書いてもらいます。
2. 守った回数と、止めた回数を数える
それぞれの仕組みが、実際に失敗を防いだ回数と、仕事を止めた回数を、記録から数えます。記録がなければ、これから数え始めます。
3. 効いていないものから、外す
守った実績が無く、止めた実績が多いものから、外します。いきなり全部ではなく、1つずつ外して、様子を見ます。
4. 中身の検査は、残す
形式的な確認を外しても、中身が正しいかの検査は、残します。僕も、署名は外しましたが、中身の検査は残しました。
守りが、増えていく理由
AIが守りを足すのは、失敗したときに、責められないようにするためです。けれども、守りの数と、安全の度合いは、比例しません。重なった守りは、かえって、どれが本当に効いているのかを分からなくします。また、守りが多い仕組みは、保つ手間も大きくなります。管理の手間が、仕事の時間を食べてしまうのです。
外す時の、記録の残し方
外した仕組みは、「いつ」「なぜ」外したかを、1行で残します。あとで問題が起きたときに、外したことが原因か、別の原因かを切り分けられます。元に戻す手順も、一緒に書いておけば、安心して外せます。
装置ダイエットの、進め方
守りの仕組みを減らすとき、僕が気をつけたのは、順番です。最初に外したのは、障害を起こしている装置です。つまり、実際に仕事を止めた実績がある仕組みです。次に、守った実績がない仕組みを見ました。そして最後に、実績の有無が分からないものを、記録を取りながら様子見にしました。この順番なら、外して困るものを、最後まで残せます。
実害の数字を、見る習慣
守りの仕組みを評価するときは、感覚ではなく、数字を見ます。「この仕組みが、いままで防いだ失敗は、何件か」「この仕組みのせいで止まった作業は、何件か」という2つの数字です。僕の署名の確認は、防いだ実害が0件で、止めた作業が多数でした。数字を見て、迷いなく外せました。数字が分からないときは、AIに記録を読ませて、数えてもらいます。数える作業は、AIの得意分野です。
守りを外した後の、安心の作り方
守りを外すと、不安になります。その不安を小さくするには、外したあとも見守る仕組みを、1つだけ残します。僕は、中身の検査を残しました。入口の形式的な確認を外しても、出口で中身を見れば、おかしなものは止められます。入口で何度も止めるより、出口で1回しっかり見るほうが、仕事は流れ、安心感も保てます。外したあとの1か月は、記録を見直して、問題が出ていないかを確かめてください。
守りを足す前に、問うこと
新しい守りの仕組みを足したくなったら、足す前に3つ問います。「これは、実際に起きた失敗を防ぐのか」「止まったときに、すぐ外せるのか」「止めた回数を、数えられるのか」です。3つとも答えられるなら、足してかまいません。1つでも答えられないなら、少し待ってください。
気をつけること
お金やお客様の情報を守る仕組みは、安易に外さないでください。外す対象は、実績の数字で、「効いていない」と確かめられたものに限ります。
今から始める社長へ
守りの仕組みは、多いほど安心とは限りません。仕事が進まないと感じたら、守りの数を疑ってみてください。まずは、AIの仕組みの中で、仕事を止めているものを1つ、見つけてみましょう。