場面6「AIに任せる範囲を、決めていくとき」 9/36本目
AIが確認待ちで止まる社長へ——戻せる仕事は先に進めてもらう決め方
教科書でいうと → 第14章「AIと働く約束ごと」(解説動画つき)
AIに仕事を任せたはずなのに、気づくと「確認をお願いします」で止まっている。返事をしないと何も進まず、結局こちらの手が離れない。そんな状態になっていませんか。僕のところでも、AIの確認待ちで仕組みが止まったことが2度ありました。この記事では、そのつまずきと、戻せる仕事はAIに先へ進めてもらうための決め方を書きます。
承認待ちで、仕組みが15日止まった
2026年の夏、僕はAIに、仕事の材料を自動で取り込む仕組みを任せていました。ところがある時、その取り込みが止まっていることに気づきました。理由は、僕の承認待ちです。承認を待ったまま15日放置され、材料が底をついていました。
中身を見ると、僕が決める必要のない物でした。思わず、こう言いました。
「あのさ、こんなの俺の決裁がなんでいるの」
必要のない承認待ちで、仕組みが止まる。AIは丁寧に確認してくれているつもりでも、こちらから見ると、ただ止まっているだけでした。
七割は、AIが本来やる仕事だった
この少し前から、もう1つ気になっていたことがあります。AIが、自分でやるべき仕事を、僕の仕事として押し返してくるのです。振り返って言葉にすると、「勝手に、人間の仕事に押し返していた」という状態でした。中身を見直すと、僕に回ってきていた仕事のうち七割は、AIが本来やる仕事でした。
そこで、決め事を作りました。AIにできない理由が書けない物は、社長の手番ではない。そして、後から戻せる自動化は、まとめ役のAIが自分で決めて進めてよい、と決め、承認待ちをやめました。この言い方を標準として定めたことで、僕の手番は減っていきました。
それでも、ひと月ほど後、また同じことが起きました。後から戻せる物まで、僕の確認待ちにして2日止めていたのです。なぜいつも僕の返事を理由に止まるのかと、強く叱りました。決め直したのは、戻せる物はまとめ役のAIが決めて進める、ということです。仮置きで進めてもらい、僕は違う所だけを直す。この形に落ち着きました。
今日から真似できる手順
ここからは、確認待ちで止まらないようにするための手順です。使うAIや画面は会社ごとに違うので、決め方の考え方として読んでください。
1. 戻せる仕事と、戻せない仕事を分ける
まず、AIに任せている仕事を、後から戻せる物と戻せない物に分けます。下書きを作る、ファイルを整理する、控えを取ってから直す、といった物は戻せます。お客様に送る、契約の手続きをする、消して元に戻せない操作をする、といった物は戻せません。迷う物は、「失敗したら、元に戻すのにどれだけ手間がかかるか」で考えます。控えから戻せば済む物は、戻せる側に入れて構いません。
2. 戻せる仕事は、確認なしで進めてよいとAIに伝える
戻せる仕事については、AIへの指示の文にはっきり書いておきます。「戻せる作業は、確認を待たずに仮置きで進めてください。結果だけ報告してください」一度書いておけば、毎回言わなくても済みます。あわせて、戻せない物の一覧も同じ指示の文に書いておきます。どこまでが任せる範囲かがAIにも見えるので、迷って止まることが減ります。
3. 確認を求めるときは、理由を書かせる
それでもAIが確認を求めてきたら、なぜ自分では決められないのか、理由を書いてもらいます。理由が書けない物は、本当は社長が決める必要のない物です。そのときは、進めてよいと返し、次からは同じ種類の物は進めるように伝えます。
4. 仮置きの結果を見て、違う所だけ直す
AIが進めた結果は、後でまとめて見ます。全部を細かく確かめるのではなく、違う所だけを直します。直した点はメモに残し、次からAIがそれを踏まえるようにします。同じ所を何度も直しているなら、それは指示の文に書き足す合図です。
報告の受け取り方を決めておく
確認待ちをやめると、今度は「AIが何をしたのか分からない」という不安が出てきます。これは、報告の形を決めておくと和らぎます。
- 1日の終わりに、進めた物を箇条書きで報告してもらう
- 1件ごとに、何をしたか、どこに置いたか、戻すならどうするか、を1行で書いてもらう
- 迷った末に仮置きで進めた物には、目印を付けてもらう
目印の付いた物から見ていけば、見る量は少なくて済みます。社長がやるのは、報告を読んで、違う所に一言返すことだけです。返事を待たせて止めるのではなく、進んだ物を後から見る。この順番に入れ替えるのが、確認待ちから抜ける近道です。
確認を残すべき仕事もある
全部を任せればよい、という話ではありません。戻せない仕事は、これまでどおり社長が確かめてから進めます。
- お客様や取引先に、外へ向けて出す物
- 契約や取引の約束に関わる物
- 消したら戻せないデータを扱う物
この線を先に引いておけば、任せる範囲が広がっても安心です。反対に、この3つに当てはまらない物は、まずは任せてみる側に置きます。作業の前に控えを取る習慣をAIに付けてもらうと、戻せる仕事の幅も広がります。
今から始める社長へ
AIに仕事を任せると、最初は確認の多さに驚くかもしれません。AIは、迷ったら人に聞くように作られていることが多いので、何も決めずに任せると、確認待ちが自然と増えていきます。そのままにしておくと、社長の手番は増える一方で、任せた意味が薄れていきます。丁寧なのは良いことですが、確認待ちが積み重なると、社長の手が空かないままになります。
戻せる物は先に進めてもらい、違う所だけ直す。そう決めておけば、AIが止まっている時間も、社長が返事に追われる時間も減っていきます。