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場面5「複数のAIや仕組みで、回していくとき」 2/40本目

毎月のメールが毎日届いた――決まった処理をAIの即興に任せない仕組みの作り方

毎月決まった日に送るメールや、毎週の集計。こうした決まった処理こそAIに任せたい、と考える社長は多いと思います。ところが、任せてみると、頼んだ通りに動かないことがあります。直してと言うと、今度は別の物ができてくる。僕も2025年の秋、まさにこの落とし穴に落ちました。この記事では、そのとき起きたことと、決まった処理を安定して回すための手順を書きます。

毎月18日のはずが、毎日になった

当時、お客様の会社に毎月18日にリマインドメールを送る、という作業をAIに頼みました。月に1回、決まった日に、決まった中身を送る。人の感覚では、いちばん簡単な部類の仕事です。

ところが、メールは毎日送られてしまいました。月1回のはずが毎日です。誤送信が起きてしまったわけです。

困ったのは、そこから先でした。直してほしいと頼むと、元の物を直すのではなく、別の物を作ってくる。頼んだ通りに動かないうえに、直すたびに中身が変わっていきます。当時の僕は、AIでできることを広げようと、APIまで触っていました。次はMCPという、AIを外の道具につなぐ仕組みも検討していた頃です。

AIは翌日に違うことを言う

この出来事で、はっきり分かったことがあります。AIには再現性がない、ということです。同じことを頼んでも、昨日と今日で同じ物が出てくるとは限りません。当時、口から出た言葉はこれでした。「そもそも AI って。翌日違うこと言うんだから」

世間では、AIに任せればなんでも自動になる、という期待があります。でも、実際に毎月の処理を任せてみると、その期待と現実の間には差がありました。

そこで僕は、方針を切り替えました。決まった処理は、ゴーハイレベルのノーコードの仕組みで組む。AIに毎回考えさせるのではなく、一度組んだ仕組みが同じ動きを繰り返す形に寄せたのです。そのほうが安定する、と判断しました。

何が分かったか

AIが得意なのは、その場で考えて案を出すことです。文章の下書き、手順の相談、調べ物のまとめ。毎回少し違う答えが返ってきても困らない仕事です。一方で、毎月18日に1通だけ送る、という仕事は、毎回まったく同じでなければいけません。ここに即興を持ち込むと、事故が起きます。決まった処理は仕組みに載せ、AIはその仕組みを作るときの相談相手として使う。この役割分けが、僕の答えでした。

今日から真似できる手順

ここからは、決まった処理を仕組みに載せるための手順です。使う道具の画面は変わっていくので、流れとして読んでください。

1. 繰り返す仕事を書き出す

まず、毎日・毎週・毎月、決まって繰り返している仕事を紙かメモに書き出します。それぞれに「いつ」「誰に」「何を」の3つを書きます。例えば「毎月18日・お客様・定例のご案内」のように、1行で書ける形にします。

2. 「その場で考える仕事」と分ける

書き出した中から、毎回同じでよい仕事に印を付けます。印の付いた仕事は、AIにその都度やらせるのではなく、仕組みに載せる候補です。逆に、毎回中身を考える仕事は、AIに相談しながら進める側に残します。迷ったら、「来月も、まったく同じ形でよいか」と自分に聞いてみます。よいなら仕組みへ、毎回変えたいならAIへ。この問い1つで、たいていの仕事は振り分けられます。印の付いた仕事が多すぎる場合は、間違えたときに困る順に並べ、上から1つだけ手を付けます。

3. 仕組みはAIと一緒に作り、動かすのは仕組みに任せる

顧客管理やメール配信の道具には、日付や条件で自動で動く設定があるものが多くあります。その設定の組み方が分からなければ、AIに画面を見せて聞きながら組みます。大事なのは、組み終わった後の毎月の実行を、AIの返事ではなく、道具の設定に任せることです。

4. 最初の1回は自分あてに送って確かめる

本番の相手に送る前に、宛先を自分のメールにして試します。いつ届いたか、何通届いたか、中身が合っているかを見ます。1通だけ届けば合格です。2通目が翌日に届いたら、どこかの設定が違っています。

誤送信を防ぐために

決まった処理で怖いのは、間違いが静かに繰り返されることです。人なら1回目で気づく間違いも、自動の仕組みは気づかずに毎日続けます。次の点を、動かす前に決めておくと安心です。

  • 送る日と回数を、日本語の1文で書いておく(例: 毎月18日に1回だけ)
  • 最初の1か月は、送った記録を自分の目で見る日を決めておく
  • 止め方を先に確かめておく。止めるボタンの場所が分からないまま動かさない

AIに組んでもらった設定でも、最後に「この設定は、毎月何回、いつ動きますか」と聞き直し、答えが自分の1文と合うかを見ます。合わなければ、動かす前に直します。

もう1つ、直すときの頼み方にもコツがあります。「直して」とだけ頼むと、AIは一から作り直すことがあります。僕が困った、別物が出てくる状態です。そこで、「今の設定のうち、送る回数の部分だけを変えてください。ほかは触らないでください」のように、変える場所を絞って頼みます。直した後は、直す前と何が変わったかを一覧で出してもらいます。変わったのが1か所だけなら、安心して次に進めます。直す前の設定は、画面の写しやメモで控えておきます。うまくいかなかったときに、元に戻す手がかりになります。

今から始める社長へ

AIに任せたい気持ちは、僕もよく分かります。ただ、毎回同じであるべき仕事ほど、AIの即興とは相性が悪い。ここを分けて考えるだけで、誤送信のような事故はぐっと減ります。考える仕事はAIに、繰り返す仕事は仕組みに。最初の1件は、毎月のお知らせメールのような小さな物から試してみてください。