場面5「複数のAIや仕組みで、回していくとき」 3/40本目
自分にはできても人に渡せない——AIの使い方を仕組みに組み込む考え方
教科書でいうと → 第15章「寝ている間に働くAI工場」(解説動画つき)
AIに頼めば自分はうまくいくのに、社員に同じことを頼んでも、同じ出来にならない。そんな悩みを持つ社長は、多いのではないでしょうか。僕も2025年の秋に、まさにこの壁に当たりました。この記事では、何が起きたかと、そこから僕がどう考え方を変えたか、そして今から始める社長が仕事を人に渡すための手順を書きます。
指示文の差で、品質が大きく変わった
当時の僕は、SNSの運用代行の仕事を、AIだけでできないかと考えていました。マヌスやチャットGPT、ジェンスパークといったAIを使い分けて、投稿の文章を作らせる。ここまでは、自分ならできます。ところが、指示文の書き方が少し違うだけで、できあがる物の品質が大きく変わることに気づきました。自分が書けばうまくいく。でも、他の人が同じ道具で同じ指示を書くと、同じようにはならない。
つまり、僕の頭の中にある「いい指示の出し方」が、仕組みの一部になっていたのです。そのままでは、人に引き継げません。自分一人で回している間はよくても、仕事を増やそうとした瞬間に、そこが行き止まりになります。
軸を、AIの外の自動化に移した
このとき僕が出した結論は、AIだけで完結させようとするのをやめることでした。自分はできても、人には落とせない。それならば、ゴーハイレベルという道具の自動化の中に、仕事の流れを組み込む。そう考えて、軸を移しました。
同じ時期に、もう一つ分かったことがあります。マヌス、チャットGPT、ジェンスパークの3つで、利用の枠を使い切ったときの挙動を見比べました。すると、枠を使い切ったときの振る舞いは、製品ごとに違っていました。道具の制限の仕組みは、製品ごとに違う。だから、特定のAIの癖に仕事の流れを合わせすぎると、あとで困ります。人にもAIにも左右されない、決まった流れを別に持っておく。これが、僕の学びでした。
属人化は、悪いことではない。ただ、広げる前に直す
誰かの腕が頼りになる仕事は、小さな会社では普通のことです。自分一人で回しているうちは、属人化していても、困りません。むしろ、早く動ける強みです。問題が出るのは、仕事を増やしたいとき、人に任せたいとき、自分が休みたいときです。そのとき初めて、「自分しかできない」という状態が、事業の天井になります。
AIを使った仕事は、特にこの状態になりやすいと感じます。指示文の工夫が、本人の感覚に頼っているからです。画面を見ながら、「もう少しこう言い換えよう」と調整する。その調整の記録が、どこにも残りません。調整の記録を残すだけでも、状況はかなり変わります。結果が良かった指示文と、悪かった指示文を、並べて保存しておく。それが、人に引き継ぐときの教材になります。
今日から真似できる手順
自社の仕事を人に引き継ぐための考え方を、4つの手順にしました。画面や機能の名前は道具ごとに変わるので、考え方を中心に読んでください。
1. うまくいった指示文を、そのまま保存する
自分が頭の中で組み立てている指示を、文章にして残します。AIに頼んで出来が良かったとき、そのときの指示文を、コピーして共有の置き場所に貼ります。指示の中身が見えるだけで、他の人が同じ頼み方をしやすくなります。
2. 指示文を、穴埋めの型にする
毎回変わる部分(お客様の名前、商品、日付など)に印を付けて、残りは固定にします。たとえば「(お客様の業種)向けに、投稿文を3本作ってください」のような型です。型を使えば、人によって指示の書き方がばらつくことが減ります。
3. 繰り返す流れは、道具の自動化に任せる
毎回同じ順番で行う作業は、AIに毎回頼むのではなく、道具の自動化の機能に流れとして登録します。AIには、文章を作る部分だけを担当してもらいます。流れ全体を、AIの気分に預けない考え方です。
4. 他の人に1回、実際にやってもらう
型と流れができたら、自分以外の人に1回、使ってもらいます。うまくいかなかった所が、まだ自分の頭の中に残っている部分です。そこを型に書き足します。この確認を1回やるだけで、引き継ぎの精度は大きく上がります。
気をつけること
自動化の道具に流れを組み込むと、今度はその道具に依存します。流れを文章で書き残して、別の道具でも作り直せるようにしておくと、安心です。また、お客様の情報が入る流れは、誰が何を見られるかを先に決めてから組み込みます。画面や機能は変わるので、手順の細部より、「人に引き継げるか」という問いを、いつも持っておくことが大切です。
引き継げる形になったかを確かめる質問
仕組みに組み込めたかどうかは、次の3つの質問で確かめられます。自分が1週間休んでも、同じ品質の物が出てくるか。新しい人が入ったとき、半日の説明で同じ作業ができるか。うまくいかなかったとき、どこで何が起きたかを、あとから読めるか。3つとも「はい」と言えるなら、AIの使い方が、個人の技から会社の仕組みに変わっています。1つでも「いいえ」なら、そこが次に直す場所です。
今から始める社長へ
自分ができることと、会社ができることは、別物です。AIを使いこなせている今の状態を、会社の力に変えるには、頭の中の工夫を外に出す必要があります。まずは、うまくいった指示文を1本、共有の置き場所に貼ってみてください。その1本が、仕事を人に渡すための、最初の一歩になります。