場面2「AIへの頼み方・聞き方で迷うとき」 18/49本目
AIの略語や造語が分からないときは、社長の言葉に合わせさせる決まりを作る
教科書でいうと → 第13章「頼み方を型にする」(解説動画つき)
AIの報告を読んでいて、知らない略語が次々に出てくる。AIが勝手に付けた呼び名や記号の分け方が、何を指しているのか分からない。そんなとき、自分の勉強不足だと思って、こっそり調べていませんか。僕も2026年の夏、AIの略語や造語に悩まされていました。そこで考え方を逆にした話と、言葉の決まりを作る段取りを書きます。
略語と造語が、記憶に残らなかった
AIに仕事を任せていると、報告の中に英語の略語が出てきます。AIが独自に名前を付けた言葉や、AIなりの記号での分け方も出てきます。ところが、その略語や造語が、僕の記憶にまったく残らないのです。
次に出てきたときには、何だったか思い出せない。報告を読むたびに、言葉の意味を確かめるところから始まってしまいます。そのとき僕がAIに伝えたのは、英語の略は日本人の僕には理解できない、ということでした。
判断のじゃまになっていた
困ったのは、覚えられないことだけではありませんでした。AIの独自の言葉や記号の分け方が分かりにくいと、それが判断のノイズになるのです。
社長の仕事は、AIの報告を読んで、進めるか止めるかを決めることです。その報告が分からない言葉だらけだと、肝心の判断に頭が回りません。内容ではなく、言葉の読み解きに力を使ってしまう。これでは、AIに任せた意味が薄れてしまいます。
言葉を合わせるのは、AIの側だった
そこで僕は、考え方をひっくり返しました。社長がAIの言葉に合わせるのではなく、AIが社長の言葉に合わせる。むしろ僕の言葉に合わせるのが筋だ、僕がボスなのだから。そう伝えました。
具体的には、AIに英語の略称を使わせず、正式な名前で書かせると決めました。そして、その決まりを手順書に書き込みました。AIが毎回作業の前に読む手順書に入れておけば、その都度言わなくても守られます。社長の言葉に合わせて書くこと。これを、AIに任せるときの決まりの一つにしたのです。
今日から真似できる手順
言葉の決まりは、次の順で作っていけます。手順書の置き方は道具ごとに違い、画面も変わるので、一覧の作り方と書き込み方の考え方に絞ります。
1. 分からなかった言葉を書き留める
まずは、AIの報告で引っかかった言葉を、メモに書き留めていきます。英語の略語、AIが付けた呼び名、記号での分類など、一瞬でも「これ何だっけ」と思った物はすべて対象です。1週間も続けると、AIがよく使う分かりにくい言葉の一覧ができあがります。
2. 自分ならどう呼ぶかを横に書く
一覧の言葉の横に、自分ならどう呼ぶかを書きます。例えば、英語の略語なら正式な名前や日本語の言い方。AIが付けた呼び名なら、社内でふだん使っている言い方。言い換えが思いつかない言葉は、AIに「この言葉を、社長が一度で分かる日本語にするなら何か」と聞けば候補を出してくれます。
3. 決まりを手順書に書き込む
AIが作業の前に読む手順書やメモに、次のような決まりを書き込みます。
- 英語の略語は使わず、正式な名前か日本語で書く
- AIが独自に付けた呼び名や記号の分類を、報告に使わない
- どうしても専門の言葉を使うときは、最初に一言で説明を添える
- 下の言い換えの一覧に従う
言い換えの一覧も、そのまま手順書に貼っておきます。
一覧は、左にAIが使いがちな言い方、右に自分の言い方を並べるだけの簡単な物で十分です。例えば、こんな形です。
- 英語の略語 → その正式な名前、またはふだん社内で使う日本語
- AIが作業に付けた呼び名 → 「お客様への返信」「月末の集計」のような、仕事の中身が分かる言い方
- 記号での分類 → 「急ぎ」「今週中」「いつでもよい」のような、ふつうの言葉
手順書の決まりは、短く言い切る形で書くのがコツです。「なるべく略語を避けてください」のような柔らかい書き方より、「略語は使わない」と書くほうが、AIは迷わず守ります。決まりの数も、最初は3つか4つに絞ります。多すぎると、どれが大事なのかがぼやけてしまいます。
この一覧は、AIのためだけの物ではありません。新しく入った社員が社内の言葉を覚えるときの、ちょっとした用語集にもなります。人とAIが同じ一覧を見て、同じ言葉で話す。そうなると、報告を読むときの引っかかりが目に見えて減ります。
4. 報告で守られているか、ときどき確かめる
決まりを書いても、AIが少しずつ元の言い方に戻ることがあります。報告の中にまた分からない言葉が出てきたら、その言葉を一覧に足して、手順書を直します。ここでも、社長が言葉を覚えて合わせる必要はありません。直すのは手順書の側です。
気をつけること
- 分からない言葉が出てきても、自分の勉強不足だと思い込まない。分かりにくい書き方をしているのはAIの側
- 社員がAIの報告を読む場合は、社員にとっても分かる言葉かどうかを確かめる
- 言い換えの一覧は、社内で共有しておく。人とAIで同じ言葉を使えるようになる
- 決まりを書き込んだ後も、AIが新しい言葉を作ることはある。見つけたらその場で「この言葉は使わないで、こう書いて」と伝え、一覧に足す
- 社外の人に見せる文書をAIに書かせるときは、相手の言葉に合わせる決まりを別に書く。社内の呼び方がそのまま外に出ないようにする
- 一般によく知られた言葉まで無理に言い換えると、かえって読みにくくなることがある。迷ったら「自分が一度で分かるか」で決める
今から始める社長へ
AIの言葉が分からないとき、社長が勉強して追いつく必要はありません。AIに、社長の言葉で書かせればいいのです。
言葉の決まりを1つ作るだけで、報告を読む時間が判断に使えるようになります。主役は社長です。言葉の主導権も、社長の側に置いておきましょう。