ニタ|ひとり社長の軽トラDX

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場面2「AIへの頼み方・聞き方で迷うとき」 19/49本目

AIと作る物が完成しないのは順番の問題。ざっくり仕様書から始める進め方

AIと一緒に何かを作っているのに、いつまでたっても完成しない。話せば話すほど、こちらの思っている物と、AIが作ってくる物がずれていく。2026年の夏の終わり、僕はまさにこの状態で、いらだっていました。この記事では、そのいらだちの正体と、今は決まりにしている3段の進め方を書きます。

完成品のイメージが、共有できなかった

当時、僕はAIに話しかけながら、製品を作っていました。頭の中には、出来上がりのイメージがあります。それを会話で伝え、AIが作る。ところが、出来上がってくる物が、頭の中のイメージと合わない。完成品のイメージがAIと共有できないまま、製品がいつまでも完成しませんでした。

伝えているのに、形にならない。そのいらだちの正体が、当時の僕には分かっていませんでした。同じように、AIに何度説明しても思った物が出てこない社長は多いはずです。

いらだちの正体は、順番だった

あるとき、ふと気づきました。僕は、会話からいきなり作る段に飛んでいたのです。話した内容を、そのまま形にしてもらう。途中に、何を作るのかを書き留めた物が無い。

本来の開発の流れは、こうでした。まず、ざっくりした仕様書を作る。次に、最小限の試作品を作る。そして、全体を図解して確かめる。最小限の試作品は、開発の世界ではMVPと呼ばれます。まず動く小さな物を作って、方向が合っているかを確かめるための物です。

気づいたときの僕の言葉は、「本質的に、間違ってたんだ。いま気づけて良かった」でした。AIの出来の問題ではなく、僕の進め方の順番の問題だったのです。それ以来、開発はこの3段で進めるのが僕の決まりになりました。

会話は流れていきます。昨日言ったことと今日言ったことが、少しずつ食い違っていても、話している本人は気づきにくい。AIはそのたびに、その時点の会話に合わせて作り直します。だから、完成形が動き続けてしまうのです。

ざっくりでも仕様書が1枚あれば、話はそこに戻ってこられます。「仕様書にはこう書いてある。だからこう作る」と、人とAIが同じ紙を見ながら進められる。完成品のイメージを共有するとは、つまり同じ紙を見ることだったのだと思います。

今日から真似できる手順

3段の進め方を、社長の手元で回せる形に分けると次のようになります。道具が変わっても使えるよう、順番の考え方として書きます。

1. 作る前に、ざっくり仕様書を書いてもらう

作りたい物について、まずはいつもどおりAIと話します。話し終えたら、作らせる前に「今の話をざっくりした仕様書にまとめて。まだ作らないで」と頼みます。仕様書といっても、立派な書類は要りません。次のような項目が並んでいれば十分です。

  • 何のための物か
  • 誰が使うのか
  • 最低限できてほしいこと
  • 今回はやらないこと

特に「今回はやらないこと」を書いておくと、話が広がりすぎるのを防げます。

2. 仕様書を読んで、社長が直す

AIがまとめた仕様書を、社長が自分の目で読みます。ここで「違う」と思った所を直すのが、いちばん安く済む直し方です。作った後で直すより、紙の上で直すほうがずっと早い。直し終えた仕様書は、ファイルに保存しておきます。

3. 最小限の試作品だけを作らせる

仕様書の中の「最低限できてほしいこと」だけを作ってもらいます。見た目や細かい機能は後回しで構いません。動く物を触ってみて、方向が合っているかを確かめます。合っていなければ、仕様書に戻って直します。

4. 全体を図解して、ずれを見つける

試作品ができたら、AIに全体の流れを図にしてもらいます。文字で読むと気づかないずれも、図にすると「ここはこうつながるはずだった」と見えてきます。図を見て直す所が出たら、それも仕様書に書き戻しておきます。

3段を回すときの、ファイルの置き方

3段で進めるときは、段ごとの出来上がりをファイルとして残しておくと、後で迷いません。例えば、作る物ごとにフォルダを1つ作り、その中に次の物を置きます。

  • 仕様書:ざっくり仕様書の最新版
  • 試作:最小限の試作品
  • 図解:全体の流れの図
  • 変更メモ:仕様書をいつ、なぜ直したかの短い記録

AIに頼むときも、「仕様書フォルダの最新版を読んでから作業して」と伝えれば、毎回会話で説明し直す必要がなくなります。仕様書を直したら、古い版は消さずに日付を付けて残しておきます。どこで方向を変えたのかを、後から追えるようにするためです。

会話の中身は、時間がたつと自分でも思い出せなくなります。けれど、紙に書いた仕様書は残ります。別の日に作業を再開するときも、別のAIに手伝ってもらうときも、まずこの1枚を渡せば話が早い。完成しない状態から抜け出す足場は、この1枚です。

気をつけること

  • 会話が長くなってきたら、作業を止めて仕様書を更新する。仕様書が古いままだと、また会話に引っ張られる
  • 仕様書はAIに書かせても構わないが、最後に決めるのは社長。読まずに進めない
  • 試作品の段で、機能を足したくなっても我慢する。足したいことは仕様書の次の版に回す
  • 仕様書や図に、お客様の情報を入れない
  • 社員や外の人と一緒に作るときも、同じ仕様書を見せる。人どうしのイメージのずれも、この1枚で減らせる

今から始める社長へ

AIと作る物が完成しないとき、原因はAIの側ではなく、進め方の順番にあることがあります。僕も長い間、そこに気づかずにいらだっていました。

会話は、作る段の材料です。作る段そのものではありません。話したら、まず紙に書く。小さく作る。図で確かめる。この順番を一度試してみると、AIとのやり取りがぐっと穏やかになるはずです。