場面2「AIへの頼み方・聞き方で迷うとき」 29/49本目
「分かりやすく話して」と頼まれても、噛み砕きすぎると肝心な所まで届かない
教科書でいうと → 第13章「頼み方を型にする」(解説動画つき)
人に教えるとき、「できるだけ分かりやすく」と心がけている社長は多いと思います。でも、分かりやすくしようとして噛み砕きすぎると、一番伝えたい部分が薄まってしまうことがあります。この記事では、僕が2026年の3月に、対談で話すことになったときに決めた方針と、その理由を、社長向けにまとめます。
「分かりやすく」と頼まれたとき
2026年の3月24日、僕は、「AI使い倒しの歴史」を、対談で話すことになりました。対談の相手からは、分かりやすく話してほしい、と言われます。ただ、噛み砕きすぎると、肝心なところまで届かない、と僕は感じていました。簡単にした分、本当に伝えたかった工夫の部分が、抜け落ちてしまうからです。
自分が踏んだ過程を、見せる
そこで決めた方針は、分かりやすく噛み砕きすぎず、自分が踏んだ過程を見せることでした。僕は、知恵熱を出しながら、過程を1つずつ踏んできました。だから、今が分かっています。サイボウズ、ワークフロー、Evernote、Notion。そうした道具を、早い段階から使ってきました。その積み重ねの上に、今のAIの使い方があります。結果だけを見せると、何も分からない。過程を見せたほうが、聞く人にも、自分で踏む道が見えます。
結果だけ伝えると、何が起きるか
「この道具を使えばうまくいく」と、結果だけを伝えると、聞く人は、道具を真似します。でも、うまくいかない場面が出てきたとき、なぜなのかが分からず、すぐにあきらめてしまいます。過程を知っていれば、「ここで私も詰まった」と思い出して、次の手が打てます。
自分が教える立場のときの手順
1. 結果の前に、つまずきを話す
うまくいった方法を伝える前に、最初にうまくいかなかったことを話します。つまずきを共有すると、聞く人が安心します。
2. 難しい部分を、削らない
簡単にするために、難しい部分を削るのではなく、難しいところは、ゆっくり説明します。削ると、聞いた人が、実際にやるときに困ります。
3. 順番を、時系列で見せる
何をやって、次に何が起きて、どう直したか。時間の順番で話すと、過程が伝わります。
4. 聞く人の、次の1歩を決める
話の最後に「まず今日は、これだけやってみてください」と、1つだけ頼みます。過程を見せたうえで、行動を絞ると、実行しやすくなります。
分かりやすさと、深さの両立
分かりやすさを捨てる必要はありません。専門の用語を使うときは、その場で短く説明を添えます。話の流れは、聞く人が迷わないよう、整理します。そのうえで、過程と、つまずきの部分は、省かずに残す。両方を満たすことが、教える側の腕の見せどころです。
社内の教え方にも使える
この考え方は、社員に仕事を教えるときにも使えます。「こうやるんだ」と結果だけ教えると、社員は同じ手順を真似しますが、状況が変わったときに対応できません。自分が過去に失敗した場面や、迷った場面を一緒に話すと、社員は、判断の仕方まで学べます。
教える前に、整理しておく3つの問い
人に教える場に立つ前に、3つの問いを、自分に投げかけておくと役に立ちます。1つ目は、聞く人は、いま何に困っているのか。2つ目は、自分が最初にはまった点は、どこだったか。3つ目は、聞いた後、聞く人に何をしてもらいたいか。この3つが決まっていれば、話に迷いません。
過程の見せ方に、資料を使う
自分の過程を見せるとき、記録が残っていると説得力が増します。当時のメモ、失敗した画面、直した後の画面。そうした資料を、話の中で見せると、聞く人が実感を持てます。日頃から、つまずいたときの画面を残しておく習慣が、後で役に立ちます。
話す順番の、組み立て例
過程を見せる話は、次の順番で組み立てると、聞く人に伝わりやすくなります。最初に、聞く人の困りごとを言い当てます。次に、自分が同じところでつまずいた経験を話します。そのあとに、どう乗り越えたかを順に説明します。最後に、今日できる1つのことを伝えます。この4つの流れなら、噛み砕きすぎなくても、聞く人はついてこられます。
聞く人の反応を、見ながら調整する
話しながら、聞く人の反応を見るのも大切です。うなずきが少なかったり、質問が出なかったりしたら、一度立ち止まって、「ここまでで分かりにくいところはありますか」と聞いてみます。過程を見せる話は、聞く人の理解の速さに合わせて、速度を調整するのがおすすめです。
話したあとの、振り返りの習慣
教えたあとは、5分だけ、振り返りの時間を取ります。どこで聞く人の反応がよかったか、どこで止まったか。メモに残しておくと、次に教えるときに、同じ失敗を繰り返しません。教えることは、自分の理解を整理する機会にもなります。
気をつけること
過程を見せる話は、長くなりがちです。聞く人の時間を考えて、話す長さを決めておくのがおすすめです。また、失敗談を話すときは、他社や特定の人の悪口にならないよう注意します。自分の経験の範囲で話してください。
今から始める社長へ
人に教えるときは、噛み砕きすぎず、自分が踏んだ過程を見せてみてください。まずは、次に誰かに説明する機会に、自分が最初につまずいた点を、1つだけ付け加えるところから始められます。