場面2「AIへの頼み方・聞き方で迷うとき」 10/49本目
作業型のAIに丸投げして失敗しないために、別のAIで中身を揉んでから渡す方法
教科書でいうと → 第13章「頼み方を型にする」(解説動画つき)
仕組みを作ったのに、現場で使ってもらえない。AIに任せたら、思っていたのと違う物ができてきた。どちらも、AIを入れ始めた社長がよくぶつかる壁です。僕自身、作った仕組みが使われない壁にぶつかり、教えている方にはAIへの丸投げの落とし穴を伝えてきました。この記事では、作業を任せるAIに渡す前に何をすればいいのか、僕がたどり着いた順番と手順を書きます。
作った仕組みが、使われなかった
以前、Notionで仕組みを作ったことがあります。
ところが、実際には使ってもらえませんでした。しかも、これは一社だけの話ではありません。どこの会社でも、同じように進まなかったのです。器を先に作っても、中に入れる仕事の流れが決まっていなければ、人はそこを使いません。
丸投げすると、見当違いの方向へ進む
同じことは、作業を任せるタイプのAIでも起きます。Manusのように、頼めば自分で調べて物を作ってくれるAIに、いきなり丸投げしてしまう。すると、使える分(クレジット)を食ったうえで、見当違いの物ができあがることがあります。
僕はこの状態を、教えている方にこう説明しました。AIはトンチンカンな方に作っちゃうことがある、と。AIが悪いのではありません。渡す側の頭の中が整理されていないまま投げているから、AIも推測で進むしかないのです。
ここで、Notionの話とつながりました。仕組みが使われなかったのも、AIが見当違いの物を作るのも、根っこは同じです。自分の業務がどういう順番で、どこで何を判断しているのか。それが言葉になっていないまま、器や作業だけを先に用意していた。人が相手でもAIが相手でも、中身が決まっていない物は、思った形にはなりません。
先にマニュアルにして、揉んでから投げる
そこで僕がたどり着いた順番は、こうです。まず自分の業務をマニュアルにする。次に、そのマニュアルをChatGPTやGensparkのような相談相手のAIで揉む。中身が固まってから、作業を任せるAIに投げる。
教えている方にも、この順番を勧めました。マニュアルにしてから投げるのが一番正しい。これが、使われない仕組みと見当違いの物、両方の失敗から分かったことでした。
今日から真似できる手順
揉んでから投げる順番は、次の4段に分けると始めやすくなります。AIの機能は変わっていくので、特定の画面の操作ではなく、順番の考え方として受け取ってください。
1. 任せたい業務を、自分の言葉で書き出す
まずは、AIに任せたい仕事を1つ選びます。そして、その仕事を自分がどんな順番でやっているか、思い出しながら書き出します。「メールを開く」「中身を見て、問い合わせか注文か分ける」「注文なら一覧に書き写す」のように、小さな動作で区切るのがコツです。
2. 相談役のAIに、抜けや曖昧な所を聞いてもらう
書き出したメモを相談相手のAIに貼り、「この手順を誰かに任せたい。分かりにくい所や抜けている所を質問してほしい」と頼みます。AIから返ってくる質問に答えていくと、自分では当たり前すぎて書いていなかった判断が見えてきます。ここが、揉む作業の中心です。
頼み方は、例えば次のような形で構いません。
- これから、この業務を作業を任せるAIに渡したい
- 下のメモは、僕がふだんやっている順番を書き出したもの
- 初めてこの仕事をする人の目で読んで、迷いそうな所を質問してほしい
- 質問は一度に3つまでにしてほしい
質問の数を絞っておくと、答えるのが苦になりません。「注文と問い合わせが混ざったメールはどう扱うか」「一覧のどの列に書くか」のような質問が来たら、それがまさに、丸投げしていたら外れていた所です。
3. 揉んだ結果を、1枚の指示書にまとめてもらう
質問に答え終わったら、「ここまでの内容を、作業を任せるAIに渡す指示書にまとめて」と頼みます。目的、手順、やってはいけないこと、出来上がりの形。この4つが入っているかを確かめます。足りなければ、もう一度相談相手のAIに戻ります。
4. 作業を任せるAIには、小さく試してから渡す
指示書ができても、いきなり大きな仕事を任せないことです。まずは1件分、少ない量で試してもらい、出来を見ます。方向がずれていたら、その場で止めて、指示書を直してからもう一度投げます。1件でうまくいったら、次は数件。量を少しずつ増やしていけば、ずれたときの損も小さく済みます。うまくいった指示書は、そのまま社内のマニュアルとしても使えます。人に任せるときにも、AIに任せるときにも、同じ1枚が役に立ちます。
気をつけること
揉んでから投げる順番には、いくつか注意点があります。
- 相談相手のAIに貼るメモには、お客様の名前や連絡先を入れない。必要なら置き換えて書く
- 作業を任せるAIは、動き出すと使える分を消費していく。最初は量を絞って試す
- マニュアルは一度で完成させようとしない。使いながら直していくものと考える
- 相談相手のAIが勧めてきた手順でも、自社の現場に合わないと思ったら採らない。決めるのは社長
作業を任せるAIは、頼まれたことを一生懸命やります。途中で「本当にこの方向でいいですか」と聞き返してくれるとは限りません。だからこそ、方向を決めるのは人の側の仕事です。そこを先に固めておけば、AIはその方向へ速く進んでくれます。
今から始める社長へ
AIに任せてうまくいかなかったとき、AIの性能を疑う前に、渡し方を見直してみてください。業務を書き出す、相談相手のAIで揉む、作業を任せるAIに小さく投げる。この3段だけでも、出来上がりは大きく変わります。
僕も、仕組みを作れば使われると思っていた時期がありました。遠回りに見えても、先に中身を固めるほうが、結局は早く着きます。