場面2「AIへの頼み方・聞き方で迷うとき」 16/49本目
英語の資料を全部日本語に訳そうとして5時間はまった。AIに任せる形の変え方
教科書でいうと → 第4章「文書と表とスライド」(解説動画つき)
海外の道具を使っていると、調べたいことの答えはたいてい英語の資料の中にあります。それなら、英語の資料を全部日本語に訳してしまえば楽になるはず。そう考えたことはありませんか。僕も、まさにその発想で仕組みを作ろうとして、長い時間はまりました。抜け出せたのは、手を動かし続けたからではなく、仕組みの考え方そのものを変えたからです。この記事では、そのときの体験と、AIに任せる形を組み直すための手順を書きます。
訳して、探して、戻す仕組みが動かない
2026年の春、僕はゴーハイレベルという海外の顧客管理の道具について、質問に答えるチャットボットを作ろうとしていました。答えの元にするのは、ゴーハイレベルの本社が出している英語のサポートページです。
考えた流れは、こうでした。日本語の質問を英語に訳す。英語で本社のサポートページを探す。見つかった答えを日本語に戻す。一つひとつは、もっともらしい手順です。ところが、この仕組みがどうしても動きませんでした。
5時間はまった末に気づいたこと
直しては試し、また止まる。その繰り返しで、気づけば5時間がたっていました。翌日、僕はこう話していました。「昨日もう5時間バグってる」
そこで、ふと考え方を変えました。全部を日本語に訳そうとしなくていいのではないか。質問は日本語で受ける。確かめるのは、AIに英語のまま任せる。返すときだけ日本語にする。日本語で聞いて、英語で確かめて、日本語で返す。この形にすればいいと閃きました。仕組みの考え方を変えたことで、ようやく解決の道筋が見えました。
何が分かったか
はまっていた原因は、作業の細かいところではなく、仕組みの組み方にありました。
僕は、人がやるのと同じ順番を、そのまま仕組みにしようとしていました。人なら、英語の資料は日本語に訳さないと読めません。けれどAIは、英語の資料を英語のまま読んで、中身を確かめられます。AIにとって不要な「訳す」という工程を、わざわざ間に挟んでいたのです。
工程が増えるほど、どこかで言葉がずれたり、探し物が見つからなくなったりする場所も増えます。訳す工程を減らすと、仕組みはぐっと素直になります。
これは、チャットボットのような仕組み作りに限った話ではありません。英語の資料を読んで判断したい、海外の取引先からのメールに返事をしたい、といった日々の場面でも同じです。英文を全部訳してから考えるのではなく、日本語で聞きたいことをAIに伝えて、英語の資料のほうを当たってもらう。訳す手間を自分で抱え込まないだけで、仕事の進み方が変わります。
今日から真似できる手順
ここからは、英語の資料をAIに使わせたいときに、はまらないための手順です。道具やAIの画面は変わっていくので、考え方を中心に書きます。
1. 人の手順をそのまま写していないか、紙に書いて見る
まず、作ろうとしている流れを、矢印でつないで紙に書きます。「訳す→探す→戻す」のように並べたら、それぞれの工程について、AIにもその工程が要るかを考えます。人の都合で入れている工程は、AIには要らないことがあります。書いた紙をAIに見せて、「この流れの中で、AIなら省ける工程はどれか」と聞いてみるのもおすすめです。自分では当たり前だと思っていた工程に、気づかせてもらえます。
2. 入り口と出口だけ日本語にする
日本語が要るのは、社長やお客様が読み書きする場所だけです。質問を受ける入り口と、答えを返す出口だけを日本語にして、間の作業はAIに英語のまま任せます。AIへの頼み方は、例えば次のようになります。
- 「次の日本語の質問について、英語の資料の中から答えを探して確かめてください。答えは日本語で、短くまとめてください」
- 「答えの元になった英語の箇所も、そのまま添えてください」
2つ目を入れておくと、AIの答えが本当に資料に書いてあるかを、自分で確かめられます。
3. 時間を区切って、止まったら考え方を見直す
同じところで何時間も止まっているときは、手を動かすほど深みにはまります。例えば1時間たっても進まなければ、いったん手を止めて、手順1の紙に戻ります。直すのは細かい部分ではなく、流れそのものではないか、と問い直します。AIに「この流れで作っているが動かない。もっと簡単な組み方はあるか」と聞くのも手です。
4. 小さな質問1つで、端から端まで通す
組み直したら、まず質問を1つだけ用意して、受けてから返すまでを通してみます。1つ通れば、仕組みの骨組みは正しいと分かります。そこから質問の種類を増やしていけば、どこで止まったかもすぐに分かります。
気をつけること
英語のまま確かめさせる形にすると、AIが資料に無いことを、もっともらしく答えてしまうことがあります。特に、設定の方法や決まりごとのように、間違えると困る答えほど、手順2で添えさせた元の英語の箇所に目を通す習慣をつけておくと安心です。英語が読めなくても、元の箇所を別のAIに訳してもらえば、答えと合っているかは分かります。
もう一つ、お客様からの質問をそのまま流すときは、名前や連絡先が入っていないかに気を配ります。資料を探すのに個人の情報は要りません。質問の中身だけを渡す形にしておきます。
今から始める社長へ
はまっている最中は、あと少し直せば動くはずだと思って、手を止められなくなります。けれど、抜け出すきっかけは、作業の量ではなく、ものの見方を変えることでした。人のやり方をAIにそのまま当てはめていないか。一度立ち止まって、流れを紙に書いてみてください。訳す手間が消えた分、社長が考えるべきこと、つまり何を聞き、どう答えるかに時間を使えるようになります。