場面5「複数のAIや仕組みで、回していくとき」 8/40本目
1つのAIに頼り切ると止まった日に仕事が止まる——代わりの道を用意する
教科書でいうと → 第15章「寝ている間に働くAI工場」(解説動画つき)
AIに仕事を任せ始めると、だんだん1つのAIに何もかも頼るようになります。慣れた相手のほうが話が早いので、自然とそうなるのです。けれど、そのAIがある日急に動かなくなったら、仕事はどうなるでしょうか。僕はそれを、2026年の春に身をもって知りました。この記事では、そのときの体験と、止まっても困らないための備え方を書きます。
頼っていたAIが、急に判断を誤った
当時、僕は動画の制作や台本づくりを、主にAntigravityに任せていました。ところが3月の終わり、そのAntigravityが急に判断を誤り始めたのです。決めておいた作業の流れも、教えておいたスキルも無視して動く。動画制作も台本制作も、ぐちゃぐちゃになりました。
そのときの気持ちは、こうです。
「これ食らったらもう仕事全く止まるなとか思って」
1つのAIに頼り切っていると、そのAIが止まった瞬間に、仕事が全部止まる。1つのAIに頼り切る危うさを知った日でした。
救いは、もう1つのAIを使っていたこと
僕が完全に止まらずに済んだのは、Claude Desktopも並べて使っていたからです。仮に片方が1日止まっても、もう片方で代わりはできる。そう判断できました。
この経験は、その後の考え方にもつながりました。2026年の初夏、Claudeが止まって動かなくなった経験も踏まえて、お客様にこう説明しています。
「今回クロードみたいに転んじゃって動かなくなったら困る」
だから、仕事の土台はAIだけに置かない。世界で大規模に使われ、セキュリティや開発の体制がしっかりしたゴーハイレベルをメインに置き、AIはその上で使う。加えて、英語圏で広く使われている主要な道具ほど、AIがよく知っていて、設定を手伝ってもらいやすい。これも、土台を選ぶときの理由になりました。
今日から真似できる手順
ここからは、AIが止まっても仕事を続けるための手順です。どのAIがいつ止まるかは予測できません。道具の名前より、備え方の考え方として読んでください。
1. 頼っている仕事を書き出す
まず、今AIに任せている仕事を書き出します。文章づくり、資料づくり、メールの下書きなど、思いつくものを全部です。そのうえで、それぞれ「止まったら困る度合い」を、大・中・小で書き添えます。お客様に約束した納期がある仕事や、毎日の連絡に関わる仕事は、たいてい大になります。
2. 困る度合いが大きい仕事に、2つ目のAIを決めておく
困る度合いが大きい仕事から順に、代わりに使うAIを決めます。普段から少しずつ2つ目のAIも触っておくと、いざというときに慌てません。いきなり初めての道具に切り替えると、使い方で迷って結局止まってしまいます。
3. 指示の文と手順を、AIの外に置いておく
AIに渡している指示の文や、作業の手順は、AIの中だけに置かずに自分のファイルとして残します。そうしておけば、別のAIに同じ指示を貼るだけで、続きを頼めます。特定のAIの設定画面にしか残っていない指示は、そのAIが止まると一緒に使えなくなります。置き場は、パソコンの中の「AIへの指示」というフォルダ1つで十分です。仕事ごとに1つのファイルにしておくと、貼り替えが楽になります。
4. お客様の情報や大事な記録は、AIの外の土台に置く
顧客名簿や予約、やり取りの記録は、AIの会話の中ではなく、顧客管理の道具など、しっかりした土台に置きます。AIは、その土台の情報を読んで手伝う役にします。土台が無事なら、AIが入れ替わっても、仕事の中身は残ります。土台を選ぶときは、多くの会社で長く使われているか、守りの体制がしっかりしているかを見ます。加えて、AIがよく知っている道具かどうかも目安になります。AIに設定を聞いたとき、答えが具体的に返ってくる道具は、それだけ扱いやすいということです。
備えるときに気をつけること
2つ目のAIを用意するとき、気をつけたいことがあります。
- 同じ物を、2つのAIに同時に書かせない。仕上がりが2つになり、どちらを使うかで迷います
- 代わりのAIに切り替えたら、そのことをメモに残す。戻すときに迷わずに済みます
- 新しいAIに乗り換えるときは、お客様の情報を入れてよいかを先に確かめる
AIはとても頼りになります。だからこそ、頼り切った状態で止まったときの影響も大きくなります。
止まった日に、慌てないための練習
備えを作っても、使ったことがなければ、いざというときに手が動きません。そこで、月に一度くらい、止まった日のつもりで練習しておくと安心です。
- いつものAIを使わずに、2つ目のAIだけで、普段の仕事を1つやってみる
- 指示の文のファイルを貼って、同じような仕上がりになるか確かめる
- 足りなかった説明があれば、指示の文のファイルに書き足す
やってみると、いつものAIが覚えてくれていた前提が、指示の文に書かれていないことに気づきます。それを書き足していくと、指示の文そのものがだんだん強くなります。2つ目のAIで同じ仕事が回ると確かめておけば、本当に止まった日にも、落ち着いて切り替えられます。
今から始める社長へ
AIを使い始めたばかりの頃は、1つのAIを使いこなすことで精一杯だと思います。それで構いません。1つを深く使ってみないと、何を任せられるのかも見えてこないからです。ただ、慣れてきたら、もう1つの道を用意しておいてください。
指示の文を外に残す。大事な記録はしっかりした土台に置く。もう1つのAIにも少し慣れておく。この3つがあれば、どれか1つが転んでも、仕事を止めずに済む見込みが立ちます。