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場面3「AIの答えを、信じる前に確かめたいとき」 13/31本目

AIが言い張って譲らない時は、別のAIに調べ直させる――社長のための見極め方

AIに作業を任せたのに、うまくいかない。理由を聞くと、AIは自分ではなく相手の側が悪いと言い張る。そう言われると、AIのほうが詳しそうに見えて、反論しにくいものです。僕も2026年の初夏、まさにこの場面に出くわしました。この記事では、そのとき別のAIに調べ直させて抜け出した体験と、AIが言い張るときの見極め方を書きます。

別のAIに点検させる試みは、うまくいっていなかった

当時の僕は、AIに作業させても、それが正しいかどうか分からない、という悩みを抱えていました。そこで、Claude Code・Codex・Antigravityの3つを使い、1つの作業を別のAIにチェックさせる仕組みを試していました。1体が作業し、別の1体が観察して点検する。複数のAIを指揮者のようにまとめて動かす形です。

ところが、これがなかなかうまくいきませんでした。いちばん困ったのは、日をまたぐ仕事をAIが忘れてしまうことです。昨日の続きを頼んでも、昨日の話が残っていない。当時の僕は、正直にこう話していました。「今は正直なかなかうまくいってなくて」

「サーバが間違っている」と言い張られた

その少し後のことです。MCPという、AIを外の道具につなぐ仕組みを使って、Antigravityにゴーハイレベルの設定をさせました。ところが、AIがハルシネーション、つまりもっともらしい作り話を始めました。うまくいかない理由を、自分の誤りではなく「サーバが間違っている」と言い張ったのです。そのときの僕の言葉はこれです。「ハルシネーションがひどいんだよ」

そこで、Codexに同じ件を調べさせました。別のAIの目で見直したことで、誤りの場所を突き止めることができました。言い張っていたほうが間違っていたのです。

何が分かったか

分かったのは、MCPでAIに直接設定させるやり方は、まだ精度が低いということでした。そして、AIが言い張るときは、同じAIと押し問答を続けるより、別のAIで調べ直すほうが早い、ということです。

この体験は、社員への教え方も変えました。いきなりAIに設定を任せるのではなく、まずはAIの指示どおりに、社員自身がコピペで手を動かす方法から教えることにしたのです。AIが考え、人が手を動かす。この形なら、AIがおかしなことを言っても、人が途中で気づけます。

今日から真似できる手順

ここからは、AIが言い張ったときに別のAIで調べ直す手順です。道具の名前や画面は入れ替わっていくので、型として覚えてください。

1. 言い張っている内容を、そのまま控える

AIが「相手が悪い」「仕様が変わった」などと言い張ったら、その文をそのままメモに写します。あわせて、自分が何を頼んだか、どの画面で止まったかも書きます。画面の写しがあれば一緒に残します。感情的に言い返す前に、まず記録です。記録があれば、後から何度でも別の目で見直せます。

2. 別のAIに、先入観なしで渡す

控えたメモを、別のAIに渡します。このとき、「このAIはサーバが悪いと言っています。本当ですか」と聞くより、「この作業がうまくいきません。原因として考えられるものを挙げてください」と聞くほうが、引きずられません。最初のAIの結論を先に見せないのがコツです。結論を見せてしまうと、2つ目のAIもその話に合わせた答えを組み立てやすくなります。材料だけを渡し、考えるのは2つ目のAIに任せます。

3. 2つの答えを並べて、食い違う所を見る

2つのAIの答えが同じなら、その答えの確からしさは上がります。食い違っていたら、そこが確かめどころです。それぞれに「その理由は何を見て判断しましたか」と聞き、根拠が具体的なほうから試します。

4. 最後は人の手で1回動かす

原因の見当がついたら、直す作業は、まず人がAIの指示どおりに手で行います。コピペで1回通してみて、うまくいったら、次から同じ作業をAIに任せる範囲を少しずつ広げます。

社員に教えるなら、この順番で

社員にAIを使ってもらうときも、同じ考え方が役に立ちます。僕がすすめるのは、次の3段の順番です。

  • 1段目: AIに手順を聞き、その手順どおりに社員が自分の手でコピペして動かす
  • 2段目: 慣れてきたら、AIの答えがおかしいと感じた所を、別のAIに聞き直してもらう
  • 3段目: 何度も同じ結果が出る作業だけを、AIに直接任せる

1段目の良さは、AIの言うことを人の目が1回通る点です。おかしな指示が混ざっても、手を動かす途中で「あれ」と気づけます。2段目で、AIの答えをそのまま信じずに確かめる癖がつきます。3段目まで進むのは、作業ごとに違って構いません。全部の作業を同じ速さで任せようとしないことが、長く続けるコツです。

気をつけること

別のAIに調べさせるときも、そのAIの答えが正しいとは限りません。2つ目のAIは裁判官ではなく、もう1人の相談相手です。答えを決めるのは、実際に動かして確かめた結果です。

もう1つ、複数のAIを組み合わせると、AIは日をまたいだ話を忘れがちです。作業ごとに、何を頼み、何が分かったかを短いメモに残し、次の日はそのメモを渡してから始めます。メモが、AI同士をつなぐ糸になります。

今から始める社長へ

AIが自信満々に言い張ると、こちらが間違っている気がしてきます。でも、言い張ることと正しいことは別です。おかしいと感じたら、別のAIに同じ件を見てもらってください。そして、社員にAIを使ってもらうなら、最初はAIに手を動かさせるより、AIの指示で人が手を動かす形から。遠回りに見えて、いちばん事故の少ない入り方です。