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場面6「AIに任せる範囲を、決めていくとき」 24/36本目

AIの導入は、現場の「この作業を減らしたい」から。押し付けの自動化は使われない

「AIを入れて、現場を楽にしたい」。そう考えて、社長が自動化の仕組みを作ったのに、現場で使われない。そんな話は、よくあります。この記事では、僕が2026年の6月に話した、AI導入の進め方、つまり現場の困りごとから始めることと、元の手順に戻れる形で進めることを、社長向けにまとめます。

完成品を渡して終わり、では使われない

2026年の6月2日、僕は、手書きの請求書からAIが請求書を作る実験を見せながら、ある話をしました。AI導入は、現場の「改善したい」が先で、押し付けの自動化は使われない、という話です。それまでの依頼のされ方で、多かったのは、完成品を渡して、自動化して終わり、というものでした。それでは、現場が使いこなせず、定着しません。

「この作業を減らしたい」から始める

僕の考えでは、AI導入は、個人の仕事の中の「この作業を減らしたい」から始まるものです。ニーズがあって、はじめてできるものだ、と話しました。たとえば、請求書の読み取りとチェックに、30分かかっていた作業が、数分でできるようになった。その変化は、本人が「減らしたい」と思っていたから、価値になるのです。

元の手順に戻れる形で、1つずつ

もう1つ大事にしているのは、元の手順に戻れる形で進めることです。うまくいかない月が出たら困るので、1個ずつ進めます。新しい仕組みがうまく動かなかったときに、すぐに従来のやり方に戻れるなら、現場も安心して試せます。

自分の会社で試す手順

1. 現場の人に、困っている作業を聞く

社長が決める前に、現場の人に「減らしたい作業は何か」を聞きます。一番時間がかかっている作業、嫌だと感じている作業を、教えてもらいます。

2. その人の作業を、1つだけ選ぶ

聞いた中から、1人の、1つの作業を選びます。複数を一度に変えようとせず、1つに絞ります。

3. 元のやり方を、残したまま試す

新しい方法と、元の方法を、並行して動かします。新しい方法の結果を、元の方法の結果と見比べて、同じ結果になるかを確かめます。

4. 現場の人が、納得してから広げる

試した人が「これは楽だ」と感じたら、周りに広げます。本人の言葉で伝わると、周りも使ってみたくなります。

押し付けにならないための、声かけ

現場に導入を頼むときは、「やらされる」と感じさせない声かけが大切です。「この作業、大変そうだから、楽にする方法を一緒に試してみませんか」のように、困りごとに寄り添う言い方がおすすめです。命令ではなく、相談の形にします。

うまくいかなかったときの扱い方

試した結果、うまくいかなかったとしても、責めないでください。どこでうまくいかなかったかが分かれば、それは貴重な情報です。元の手順に戻して、また別の方法を試せばよい。そう決めておくと、現場は挑戦しやすくなります。

よくある疑問:社長が決めたほうが、早くないですか

社長が決めて一気に変えれば、確かに早く見えます。でも、現場が使わなければ、結局何も変わりません。最初に現場の声を聞く時間は、遠回りに見えて、実は一番の近道になります。

現場で、小さく試すときの目安

小さく試すときは、期間と人数を決めておきます。たとえば「2週間、1人の担当者が、1つの作業だけ」というように、範囲を狭くします。範囲が狭いと、うまくいかなかったときの影響も小さく、すぐに元に戻せます。2週間後に、現場の人に「続けたいか」を聞いて、続けるかどうかを決めます。

使われている仕組みと、使われない仕組みの違い

使われ続ける仕組みには、共通点があります。作った人ではなく、使う人の困りごとから生まれていること。使い方が、現場の人の1日の流れに無理なく入ること。うまくいかないときに、すぐ元に戻れること。この3つがそろっているかを、導入前に確かめるのがおすすめです。

導入の効果を、現場の言葉で伝える

導入の効果を周りに伝えるときは、数字と、使った人の言葉の両方を使います。たとえば「30分かかっていた読み取りが、数分になった」という事実と、「前より気が楽になった」という本人の声です。数字だけでは伝わらない実感が、言葉で伝わります。

導入を頼まれたときの、確認の質問

現場から導入を頼まれたときや、自分から導入を提案するときは、確認の質問を3つ用意しておくと役に立ちます。「いま、この作業に1回あたりどれくらい時間がかかっていますか」「減ったら、その時間で何をしたいですか」「うまくいかなかった場合、元のやり方に戻せますか」。この3つに答えられれば、導入を進める準備が整っています。

社長が自分の仕事から試す

現場に頼む前に、社長自身の仕事で、先に試してみるのも1つの方法です。自分の「減らしたい作業」を1つ選んで、AIで試すと、現場の気持ちも、導入の難しさも、実感できます。自分が使ってみた経験があると、現場に提案するときの説得力も増します。

気をつけること

現場の人が出した困りごとを、全部叶えようとすると、収拾がつかなくなります。優先順位をつけて、1つずつ進めてください。また、請求書のような、お金に関わる作業は、元の手順での確認を、しばらく残しておくのがおすすめです。

今から始める社長へ

AIの導入は、現場の「減らしたい」から始めてください。まずは、現場の人に、一番時間のかかっている作業を1つだけ聞いてみるところから始められます。