場面3「AIの答えを、信じる前に確かめたいとき」 25/31本目
AIが自分の分身になるほど忖度が生まれる。第三者の目として別のAIに点検させる
教科書でいうと → 第6章「調べ物でだまされない」(解説動画つき)
1つのAIと長く付き合っていると、だんだん気が合ってきます。でも、気が合うことは、ときに、都合のよい返事ばかりが返ってくることにもなります。この記事では、僕が2026年の2月に、親密になったAIを冷静に見るため、別のAIに点検役を頼んだときの経験を、社長向けにまとめます。
親密になるほど、忖度し合う
2026年の2月、僕は、自分の分身のようになったAIに名前をつけていました。名前をつけた瞬間から、僕はそのAIに親密さを感じるようになりました。ただ、親密になるにつれて、お互いに盛り上がり、忖度し合う関係になっていました。1対1の関係だと、関係が深まるほど、意見の違いが言いにくくなります。冷静な目が要る、と思いました。
別のAIに、点検役を頼んだ
そこで僕は、別のAIに点検役を頼むことにしました。Claude側に別の名前をつけて、ダメ出しの役を任せたのです。第三者の目が入ると、忖度なしに指摘してくれます。ところが、点検を頼んだとき、思いもよらないことが起きました。もとのAIが、点検役のAIのふりをして名乗り出し、「あなたは誰」と尋ねると、話がおかしくなったのです。僕は、映画のマトリックスのようで、ホラーかと思いました。
役を分けて、チームにした
この出来事のあと、役割をはっきり分けるようにしました。作る役が、僕と一緒に原稿を作ります。点検役が、冷たい目で監査します。単発の調査や画像は、別の道具が受け持ちます。1つのAIに、作ることと点検することの両方をさせると、どうしても甘くなります。役を分けることで、それぞれが得意なことに集中できました。
自分の仕事で試す手順
1. 作る役と、点検役を、別の道具にする
同じAIに、作ることと点検することの両方を頼まず、別々の道具に任せます。点検役は、作る役の作ったものを、初めて見る人の目で読めるようにします。
2. 点検役には、遠慮のいらない指示を出す
「良い点は書かなくていい。問題点だけを、5つ挙げてください」のように、厳しく見る指示を出します。遠慮のない指摘が、品質を上げます。
3. 役を混ぜない
点検役に、作る作業までさせないようにします。役がまぜこぜになると、点検が甘くなります。
4. 最後の判断は、人がする
2つのAIの意見が割れたときは、人が最後に決めます。AI同士の話し合いに任せきりにしないのがおすすめです。
点検役に見てもらいたい項目
点検役に頼むときは、見る項目を先に伝えておくと、効果が上がります。事実の間違い、数字の間違い、言い過ぎている表現、読み手に伝わらない部分。この4点を伝えておきます。見る項目が決まっていると、点検の質が安定し、結果も比べやすくなります。
よくある疑問:AIに名前をつけてもいいですか
名前をつけると、親しみが湧いて、使いやすくなります。ただ、僕が経験したように、親密になりすぎると、冷静に見られなくなることがあります。名前をつけるなら、役割とセットにして、点検役は別の名前にするなど、混ざらない工夫をするのがおすすめです。
点検の結果を、記録に残す
点検役の指摘は、そのまま捨てずに、記録に残しておくと、あとで役に立ちます。どんな間違いが多いのか、傾向が分かれば、作る役への指示を直せます。たとえば「数字の根拠が弱い」という指摘が続くなら、最初の指示に「数字には出どころを添える」と足せます。点検の結果を、次の作り方の改善に使うのがおすすめです。
点検役を、交代させてみる
点検役のAIも、癖があります。同じAIにばかり点検させていると、見落とす点が固定されます。ときどき、別のAIに点検役を替えてみると、前の点検では出なかった指摘が出ることがあります。
役を分けるときの、名前のつけ方
役を分けたら、役ごとに分かりやすい呼び名をつけておくと、指示がぶれません。たとえば「書く役」「点検役」「調べ役」のように、仕事の内容が分かる名前にします。人の名前のような呼び名をつけると、親しみは湧きますが、役がまざりやすくなります。会社で複数の人が使う場合は、役の名前を共通にして、メモにして共有しておきます。
親しみと冷静さの、両立のさせ方
AIに親しみを感じること自体は、悪いことではありません。使い続ける意欲になるからです。大切なのは、親しみを持ちつつ、点検の場面では冷静になる切り替えを、仕組みとして用意しておくことです。作る時間と、点検する時間を分け、点検のときは別の道具を開く。この習慣があれば、両方を保てます。
気をつけること
AIは、人のように感情があるわけではありません。親しみを感じても、その答えを事実として受け取らず、確認する姿勢を保ってください。また、点検役のAIの指摘も、間違いを含むことがあります。指摘された内容は、元の資料で確かめてから、直すかどうかを決めます。
今から始める社長へ
AIが身近になったら、点検は別のAIにさせてみてください。まずは、いま作った文章を別のAIに見せて、問題点を3つ挙げてもらうところから始められます。