場面5「複数のAIや仕組みで、回していくとき」 26/40本目
「朝起きたらAIが全部やってくれる」は幻想。今ある技術を1つずつ橋渡しする
教科書でいうと → 第15章「寝ている間に働くAI工場」(解説動画つき)
「AIを入れれば、朝起きたら仕事が終わっている」。そんな期待を持って始めて、思ったほど進まず、やめてしまう社長がいます。この記事では、僕が2025年の10月に、AIの期待と現実の差を整理して、考え方を決めた経緯を書きます。
世間の期待と、現実の差
2025年の10月、来年のセミナーの軸を決めました。「AIが何でもやる、は幻想。今ある技術の橋渡しと合理化を1つずつ積み重ねる」というものです。僕の言葉でいえば「朝起きたらAIがやってくれるってのは幻想」です。世間のAIへの期待と、実際にできることの間には、差があります。その差を埋めるのは、魔法ではなく、小さな仕組みを1つずつ作ることだと、考えるようになりました。
提案を「1つずつの合理化の実績」に切り替えた
この考えに沿って、お客様への提案も変えました。大きな夢を語るのではなく、「この作業が、これだけ減りました」という、1つずつの合理化の実績を示す形です。口コミの返信、投稿文づくり、記録の文字起こし。どれも、1つひとつは小さな作業です。でも、小さな合理化を積み重ねると、全体の負担は着実に軽くなります。
「橋渡し」とは何か
今ある道具は、それぞれ得意なことがあります。録音を文字にする道具、文章を作る道具、予約投稿する道具。でも、道具と道具の間は、人が手でつないでいることが多いです。その手作業を、仕組みでつなぐことが、僕のいう橋渡しです。新しい技術が出るのを待つより、今あるものを組み合わせるほうが、早く成果が出ます。
自分の会社で、1つずつ進める手順
1. 毎週繰り返している作業を、3つ書き出す
「毎週、同じことをしている」作業を3つ挙げます。大きな作業ではなく、30分で終わるものが向いています。
2. その中から、1つだけ選ぶ
3つ全部を一度にやろうとしないでください。一番、面倒だと感じているものを1つ選びます。
3. 前後の手作業を、橋渡しできないか考える
選んだ作業の前後で、人が写している、貼っている、打ち直している部分を探します。そこが、橋渡しの候補です。
4. 減った時間を、書き残す
作業が減ったら、どれだけ減ったかを、メモに残します。これが「1つずつの合理化の実績」になり、次の1つに進む力になります。
小さな合理化が、大きな差になる理由
1回の合理化で減る時間は、数分かもしれません。でも、それを毎週繰り返すお店や会社では、1年でかなりの時間になります。さらに、減った時間で、次の合理化を考えられます。小さな成功が、次の挑戦への余裕を生むからです。一気に大きく変えようとして止まるより、小さく始めて続けるほうが、結果的に遠くまで進めます。
世間の話と、自分の現場を分けて考える
AIの話題は、毎日のように新しいものが出てきます。でも、世間で話題になっていることと、自分の会社に今必要なことは、別です。新しい話を聞いたら「これは自分の毎週の作業の、どれに使えるか」と考えます。使い道が思いつかないものは、今は見送ってかまいません。自分の現場の困りごとから出発すると、話題に振り回されにくくなります。
今ある道具で、まず何が橋渡しできるか
橋渡しの候補は、身近なところにあります。録音した打合せを文字にして、その要点を議事録にまとめる。写真から投稿文を作り、予約投稿に回す。口コミの文を貼って、返信の下書きを作る。どれも、すでにある道具の組み合わせで、新しい技術は要りません。提案を1つずつの合理化の実績に切り替えたのも、こうした小さな橋渡しを大事にしたかったからです。大がかりなものを作る前に、身近な作業から見直してください。
失敗しても、傷が浅いうちにやめられる
小さく始めることには、もう1つの利点があります。うまくいかなかったときに、やめるのが簡単なことです。大きな仕組みを作ってしまうと、うまくいかなくても、かけた時間や手間が惜しくて、やめにくくなります。1つの作業だけを橋渡ししておけば、合わなかったら元の手作業に戻すだけです。戻れる範囲で試すのが、AIを仕事に入れるときの安全な進め方です。
周りの人にも、小さな実績から見せる
社内でAIの導入を進めるときも、同じ考え方が役に立ちます。「AIで全部変えます」と宣言すると、社員は不安になります。「この作業を、先にこう変えてみました」と、1つの実績を見せたほうが、周りは受け入れやすくなります。1つ見せて、次の1つに進む。この繰り返しが、会社全体の変化になります。
気をつけること
AIに期待しすぎると、できなかった時の失望が大きくなります。「全部やってくれる」ではなく「この作業を、少し減らしてくれる」くらいの期待から始めるのがおすすめです。また、仕組みを作った後も、動いているかを時々確認してください。任せきりにして放置すると、止まっていることに気づかないまま、時間が過ぎます。
今から始める社長へ
AIは、朝起きたら全部終わらせてくれる存在ではありません。でも、毎週の作業を1つずつ減らしてくれる存在にはなります。まずは、今週繰り返した作業を3つ、紙に書き出してみてください。