場面6「AIに任せる範囲を、決めていくとき」 12/36本目
昔の事情で生まれた決まりが、今も仕事にムラを作っていないか
教科書でいうと → 第14章「AIと働く約束ごと」(解説動画つき)
社内で当たり前のように使っている言葉や決まり。なぜそうしているのかと聞かれると、誰も答えられない。昔はちゃんと理由があったのに、その理由はもう消えている。この記事では、僕が2026年の8月に、AIの仕事の回し方に残っていた古い決まりを見直した体験と、社長が社内の古い決まりを見直す手順を書きます。
「夜にやる」の由来は、パソコン1台の時代だった
2026年の8月、AIの仕事の回し方を見直していました。その中に、「夜の間にやる」という前提の作業が残っていました。昼に回せばいい仕事まで、夜に回す形になっていたのです。由来をたどると、パソコンが1台しかなかった頃の名残でした。1台のパソコンで、僕の作業とAIの作業がぶつかるので、僕が寝ている間にAIのブラウザ操作を回していた。その時の決まりが、言葉ごと残っていたのです。その後、AIが作業するためのパソコンを別に用意したので、ぶつかる理由はもうありませんでした。
「その時点で、その視点は捨てるべきだった」
由来が分かった時、僕はこう言いました。「作業用のパソコンを作った時点で、その視点は捨てるべきだった」。古い言葉が残っていると、古い前提で仕事が組まれます。昼に回せる仕事が夜まで待たされ、作業にムラが出ていました。そこで、「夜間」という言葉と、同じように古い前提から生まれた言葉を、まとめて使うのをやめました。今の体制を前提にした回し方に切り替えました。
分かったのは、制約が消えたら、言葉も一緒に退役させるということ
この経験で分かったのは、決まりの元になった制約が消えたら、その決まりを表す言葉も一緒に退役させるということです。
- 言葉が残ると、人もAIも、その言葉の前提で考える
- 制約が消えたことを知らない人ほど、古い言葉を守り続ける
- 言葉を消すと、前提も一緒に消える
決まりだけを変えて言葉を残すと、いつの間にか古いやり方に戻ってしまいます。
今日から真似できる手順
1. 社内でよく使う言葉と決まりを書き出す
まず、社内でよく使う言葉や決まりを書き出します。「月末は発注しない」「この作業は午後に」「この書類は紙で」。当たり前になっている物ほど、書き出す価値があります。
2. それぞれの由来を聞いてみる
書き出した物について、なぜそうしているのかを、古くからいる人に聞いてみます。由来が分からない物は、AIと一緒に、どんな理由がありそうかを考えてみます。
3. 由来の制約が、今もあるかを確かめる
由来が分かったら、その元になった制約が今もあるかを確かめます。道具が1つしかなかった、担当者が1人しかいなかった、システムが対応していなかった。今はどうかを確かめます。
4. 制約が消えていたら、言葉ごと替える
制約が消えていたら、決まりを変えるだけでなく、言葉も替えます。新しい言葉を決めて、社内で使う言葉をそろえます。AIへの指示や手順書に古い言葉が残っていれば、そこも書き換えます。
AIへの指示にも、古い言葉は残る
AIに渡している指示や手順書にも、古い言葉は残ります。AIは、書いてあることを忠実に守ろうとします。古い前提の言葉があれば、それに従って動きます。人なら「今はもう違うよね」と気づける所でも、AIは気づきません。だから、AIへの指示は、人への決まり以上に、こまめに見直す必要があります。
見直しは、体制が変わった時に
古い決まりの見直しは、体制が変わった時にやるのが効果的です。人が増えた、道具を替えた、拠点を増やした。こうした変化の時に、「前の体制だから生まれた決まりはないか」を見直します。変化の直後なら、古い前提がまだ記憶に新しく、見つけやすいからです。
言葉を替えた後に、やっておくこと
言葉を替えたら、その言葉が使われている場所を、全部探して書き換えます。手順書、社内の掲示、AIへの指示、表の見出し。1か所でも古い言葉が残ると、そこから古い前提が戻ってきます。AIに「この古い言葉が使われている場所を、全部探して」と頼むと、手順書やファイルの中を探してくれます。書き換えた後、しばらくは会議や会話で古い言葉が出たら、その場で新しい言葉に言い直します。言葉がそろうまで、少し時間がかかります。
気をつけること
由来が分からない決まりを、すぐに消すのは危険です。思わぬ理由で必要な決まりもあります。由来を確かめてから判断してください。決まりを変える時は、関わる人全員に伝えてください。また、お客様との約束に関わる決まりは、社内の都合だけで変えないでください。
今から始める社長へ
社内には、理由を誰も説明できない決まりが、きっといくつかあります。その中に、昔の制約から生まれて、今は意味のない物が混ざっているかもしれません。まずは、当たり前に使っている言葉を3つ書き出して、その由来を確かめてみてください。