場面4「やったことを、残して引き継ぐとき」 1/27本目
AIの手順どおりに触ったら壊れた時のために、触る前に控えを取る方法
教科書でいうと → 第7章「会社の第2の脳」(解説動画つき)
AIに聞いた手順どおりに設定を変えたのに、動かなくなってしまった。元に戻そうにも、前の状態がどうだったか思い出せない。AIに作業を手伝ってもらうようになると、こういう場面に一度は出会います。僕も、AIに聞いたやり方で書き換えて、動かなくしてしまったことがあります。この記事では、そのときの話と、同じ目にあわないために触る前に控えを取る方法を書きます。
AIに聞いたやり方で書き換えて、動かなくなった
2025年の夏、僕はゴーハイレベルという顧客管理の道具を使っていて、その中の設定を書き換えたいと思っていました。やり方は、GensparkというAIに聞きました。返ってきた手順に沿って、そのまま書き換えていきました。
ところが、書き換えた結果、元の中身を上書きしてしまいました。そして、それまで動いていたものが動かなくなったのです。
AIの手順どおりにやったのに壊れた。これが、このときいちばん困ったことでした。手順を間違えたわけではありません。言われたとおりに進めた結果が、これだったのです。
何が分かったか
この件を振り返って思うのは、AIの手順は、こちらの今の状態を全部知ったうえで書かれているわけではない、ということです。AIは、聞かれた内容から、よくあるやり方を組み立てて答えます。こちらの画面に何が入っているか、ほかの設定とどうつながっているかまでは見えていません。だから、手順そのものは正しくても、こちらの状況では上書きになってしまうことがあります。
そして、上書きは怖い作業です。書き換える前の中身が消えてしまうと、何をどう戻せばいいのか、手がかりがなくなります。AIの手順を試すこと自体が悪いのではありません。試す前に、戻れる場所を作っておかなかったことが、いちばんの問題でした。
今日から真似できる手順
ここからは、AIの手順を試す前に控えを取るための手順です。道具ごとに画面は変わるので、考え方を中心に書きます。
1. 触る前に、今の画面を写す
まず、書き換える画面を、そのまま写しておきます。Windowsなら、Windowsキーと Shift と S を同時に押すと、範囲を選んで写せます。設定の欄が長くて1枚に収まらないときは、何枚かに分けて写します。写した画像は、日付と作業の名前を付けたフォルダに入れておきます。
2. 文字で書かれた設定は、まるごと写し取る
設定の中に文字やコードを書く欄があるなら、中身を全部選んでコピーし、メモ帳などに貼って保存します。画面の写しだけだと、長い文字は写りきらないことがあります。文字で残しておけば、上書きしてしまっても、貼り戻すだけで元に戻せます。道具に書き出しや複製の機能があるなら、それも使います。元の物を複製してから、複製のほうで試すのがいちばん安心です。
3. AIに、上書きになるかどうかを先に聞く
手順をもらったら、試す前にAIに聞き返します。例えば、次のような聞き方です。
- 「この手順をやると、今ある設定は消えますか。上書きになるところがあれば、先に教えてください」
- 「元に戻したくなったときの戻し方も、あわせて教えてください」
戻し方を答えられない手順は、試す前に一度立ち止まる合図になります。
4. 1か所ずつ変えて、そのつど動きを見る
手順が何段もあるときは、全部をまとめて進めないようにします。1か所変えたら、ちゃんと動くかを確かめる。動いたら、次へ進む。こうしておけば、どこで壊れたのかがすぐに分かります。動かなくなったら、その直前に変えた1か所だけを戻せば済みます。
もし控えを取る前に壊してしまったら
それでも、控えを取らずに触ってしまうことはあります。そのときは、慌ててさらに書き換えるのをやめて、まず手を止めます。焦って別の手順を重ねると、どこから壊れたのかがますます分からなくなるからです。
次に、やったことを順番に書き出します。どのAIに何を聞いたか、返ってきた手順のどこまで進めたか、どの画面で何を変えたか。覚えている範囲で構いません。そのうえで、書き出した内容と今の画面の写しを、AIに見せて相談します。「この手順で書き換えたら動かなくなった。元に戻すために確かめることを順番に教えて」と聞けば、何から見ればいいかの道筋が立ちます。道具によっては、変更の履歴や、以前の版に戻す機能を持っている物もあります。あるかどうかも、あわせてAIや公式の窓口に聞いてみてください。
気をつけること
控えを取るときに気をつけたいのは、置き場所です。デスクトップに散らばらせると、いざというときにどれが最新か分からなくなります。「控え」という名前のフォルダを1つ作って、日付を頭に付けて入れていく。これだけで、探す手間が減ります。
もう一つ、お客様の情報が並ぶ画面を写すときは、その写しを社外に出さないことです。控えは自分の会社の中で戻るための物です。AIに相談するときに画面を貼るなら、名前や連絡先が映っていない画面にするか、塗りつぶしてから貼ります。
それから、本番で動いているものを試しに触るのは、できれば忙しくない時間にします。お客様からの申込みや予約が入る時間帯に壊すと、気づくのが遅れたぶん、影響が大きくなります。
今から始める社長へ
AIは、作業の道案内をとても上手にしてくれます。けれど、道を間違えたときに引き返す地図までは、こちらが用意しておく必要があります。触る前に写す。中身を写し取る。上書きになるかを聞く。1か所ずつ進める。この順番を体に入れておけば、AIの手順を試すことが、怖い作業から気軽な作業に変わっていきます。