場面5「複数のAIや仕組みで、回していくとき」 10/40本目
AIが速いほど人の受け渡しが詰まる——役割を振って調整を減らす
教科書でいうと → 第15章「寝ている間に働くAI工場」(解説動画つき)
AIを何種類も使い始めると、ある日、不思議な状態になります。AIの作業は速いのに、仕事全体は、思ったほど早く進まない。僕も2026年の4月に、まさにこの状態になりました。この記事では、詰まっていた場所がどこだったかと、今から始める社長が、AIを複数使うときに受け渡しを減らす手順を書きます。
遅いのは、AIではなく、自分だった
当時の僕は、複数のAIを並べて使っていました。それぞれのAIの作業は、とても速く進みます。ところが、AIの間で、指示を伝え、結果を共有する作業は、僕が手でやっていました。この受け渡しが増えるにつれて、手動では回らなくなってきたのです。当時の僕の言葉は、こうです。「もはやもう俺のオーケストレーションがボトルネック」
オーケストレーションとは、複数の演奏者をまとめて指揮するように、複数のAIをまとめて動かすことです。AIが速くなるほど、指揮をする自分の受け渡しが追いつかなくなる。それが、詰まりの正体でした。
役割を振って、受け渡しを減らした
そこで、AIに役割を振りました。たとえば、ノーションの上での構築は、監査役のAI、つまりクロードに任せる、といった形です。役割を決めておけば、いちいち僕が指示を渡し直さなくても、担当のAIが自分の範囲を進めてくれます。
つまり、AIの数が増えたら、AIの性能を上げる前に、役割分担を決めて、人が介入する回数を減らす。これが、このときの学びでした。
人が詰まりになる、よくある場面
AIを複数使っていると、人がボトルネックになる場面が、いくつか決まって出てきます。1つ目は、AIの出力を、別のAIの入力に、コピーして貼っている場面。2つ目は、同じ内容を、AIごとに言い直している場面。3つ目は、どのAIがどこまでやったかを、頭の中で覚えている場面です。どれも、1回あたりは数分ですが、1日に何回も繰り返すと、大きな時間になります。しかも、人は疲れると、貼る場所を間違えたり、古い版を渡したりします。速いAIの作業に、遅くて間違えやすい人の手が挟まる。この構造を、まず意識することが、見直しの第一歩です。
今日から真似できる手順
AIを複数使うときの、受け渡しを減らす進め方を、4つにまとめました。
1. 人が間に入っている場所を、数える
1日の作業のなかで、自分がAIの間でコピーや伝言をしている回数を、数えてみます。回数が分かると、どこが詰まりなのかが見えてきます。感覚だけで「忙しい」と思っているより、数字にしたほうが、対策を立てやすくなります。
2. AIごとに、担当の範囲を決める
「資料づくりはこのAI」「点検はこのAI」「調べものはこのAI」のように、担当を決めます。範囲を決めると、AIどうしの受け渡しも、同じ形で済みます。
3. 受け渡しは、共有の場所に置く
AIから別のAIへ渡す内容は、共有の場所に置いて、相手のAIにそこを読ませます。人がコピーして貼るより、置き場所を決めて読ませるほうが、ミスも手間も減ります。
4. 人が見るのは、結果だけにする
途中の受け渡しに、人は関わらず、最後にできあがった結果だけを確認します。途中経過を全部見ようとすると、結局、詰まりが戻ってきます。
気をつけること
役割を決めても、AIが範囲を越えて動くことがあります。各AIに、「担当の範囲はここまで」と、最初に伝えておきます。また、人が見るのが結果だけでも、お客様に出す物の最終確認は、自分で行います。
速さは、全体で考える
AIの作業が速くなっても、全体が速くなるとは限りません。全体の速さは、いちばん遅い場所で決まります。僕の場合は、そのいちばん遅い場所が、人の受け渡しでした。AIの力を活かすには、AIの外側にある、人の動きも見直す必要があります。
役割を決める前に、やっておくこと
役割を振る前に、各AIに「あなたは何が得意で、何が苦手か」を、自分で説明してもらいます。AI自身の説明は、あくまで参考ですが、得意な範囲の目安にはなります。次に、小さな仕事を、AIごとに1つずつ頼んでみて、出来を見比べます。実際の出来を見てから役割を決めれば、後から振り直す手間が減ります。決めた役割は、1枚のメモにまとめて、共有の場所に置いておきましょう。
受け渡しを減らすと、見えてくるもの
人の受け渡しが減ってくると、AIの得意と不得意が、はっきり見えてきます。任せたAIの出来が良ければ、その範囲を広げます。出来が悪ければ、別のAIに振り直します。こうした見直しは、人が毎回の受け渡しに追われていると、なかなかできません。受け渡しの手間を減らすことは、時間をつくるだけでなく、AIの使い方を改善する余裕をつくることでもあります。
今から始める社長へ
AIを増やす前に、「いま、自分がどこで詰まっているか」を数えてみてください。詰まりが人の受け渡しなら、役割を振って、介入を減らす順番です。最初の一歩は、AIに任せる範囲を、1つだけ決めることです。